金継ぎした食器が使える理由!電子レンジや食洗機は?危険なNG行為も解説
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金継ぎした食器が使える理由!電子レンジや食洗機は?危険なNG行為も解説

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割れてしまったお気に入りのうつわを金継ぎで直したあと、その食器は本当に日常の食卓で使えるのか、安全性や強度が気になっている人は多いと思います。

特に、金継ぎした食器を普段のごはん用のお皿やマグとして使えるのか、それとも観賞用として飾るべきなのか、判断がむずかしいところですよね。

金継ぎした食器の安全性や強度、電子レンジや食洗機で使えるかどうか、本漆金継ぎと現代金継ぎや簡易金継ぎの違い、どこまで日常使いしていいのか……このあたりがモヤッとしている方が多い印象です。

検索しても、本漆金継ぎは大丈夫という話もあれば、金継ぎした食器は一切使えないほうが良いという意見もあって、「結局どうすればいいの?」となりがちかなと思います。

この記事では、金継ぎした食器がどんな条件なら安心して使えるのか、逆に「これはやめておいたほうがいい」ケースはどこなのかを、器好きの立場からできるだけかみ砕いてお話しします。

あなたの器が、ただ飾られるだけではなく、また食卓で気持ちよく活躍できるかどうかを一緒に整理していきましょう。

本漆の伝統的な金継ぎか、エポキシ樹脂などを使う現代金継ぎかによって、食器としての使い方や注意点は大きく変わります。

この記事を読み終えるころには、「自分のライフスタイルだと、どの金継ぎなら食器として使えるのか」「電子レンジや食洗機を使うならどこまでが現実的か」が、かなり具体的にイメージできるようになるはずです。では順番に見ていきましょう。

この記事で分かること

  1. 金継ぎした食器の安全性と強度の考え方
  2. 本漆金継ぎと現代金継ぎで食器として使える範囲の違い
  3. 電子レンジ・食洗機・日常使いで気をつけるポイント
  4. 金継ぎの費用感とDIYキットを選ぶときの注意点

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金継ぎした食器は使える?基本の考え方

まずは「金継ぎした食器はそもそも使えるのか?」という、一番根本的なところから整理していきます。

ここでは、本漆金継ぎと現代金継ぎで何が違うのか、安全性や強度をどう考えればいいのか、電子レンジや食洗機との付き合い方の土台になる部分をしっかり押さえていきましょう。

ここが腑に落ちると、ネット上の情報に振り回されずに、自分で判断しやすくなりますよ。

金継ぎ食器の安全性と強度

金継ぎ食器の安全性と強度を考えるとき、いちばん大事なのは「何で継いでいるか」と「どこまで硬化しているか」です。

同じ金継ぎという名前でも、本漆を使う伝統的な方法と、接着剤や樹脂を使う現代金継ぎでは、性質も得意な使い方もかなり違います。この違いをざっくりでも理解しておくと、食器として使えるかどうかの判断がぐっとラクになりますよ。

本漆金継ぎは、漆の樹液を精製した本漆をベースに、錫や銀、純金粉などを重ねて仕上げる方法です。漆は、空気中の水分や温度に反応してゆっくりと重合し、いわゆる「硬化」していきます。

ここがポイントで、本漆は表面が乾いたように見えてからも、内部では長期間かけて硬く締まっていくという性質を持っています。

歴史的には、漆器のお椀やお盆など、口に触れる前提の道具に使われてきたので、「きちんと硬化していれば、食器としての使用に耐えうる」という実績があるわけですね。

一方、現代金継ぎ・簡易金継ぎは、エポキシ樹脂や瞬間接着剤、新うるし系の塗料など、いろいろな合成材料を組み合わせるスタイルです。

こちらは、硬化スピードが速かったり、扱いが簡単だったり、場合によっては耐熱温度が高かったりと、日常使いにはありがたいメリットも多いです。

ただし、その安全性や強度は使う材料ごとにまったく違うので、「金継ぎキットだから全部同じ」とは絶対に考えないほうがいいです。

もうひとつ、意外と見落としがちなのが「力のかかり方」です。金継ぎした部分は、うつわの中でも弱点になりやすい場所なので、同じ継ぎ方をしても、浅い欠け・小さなヒビ・完全に割れたものなど、破損状態によって負荷のかかり方が違います。

例えば、カップの口縁の小さな欠けを金継ぎした場合と、持ち手が完全に割れたマグカップを継いだ場合とでは、後者のほうが日常使用時にずっと大きな力がかかりますよね。

「金継ぎしたから新品同様に丈夫になる」というイメージは、一度リセットしておくのがおすすめです。

まとめると、金継ぎ食器の安全性と強度は、

  • 本漆か、現代金継ぎ用の接着剤・樹脂か
  • 完全硬化までどれくらい待ったか
  • どんな壊れ方をしていて、どれくらいの負荷がかかる場所か

この3つのバランスで決まってきます。ここを意識しながら読み進めてもらえると、「自分のうつわ」をイメージしながら考えやすくなるはずです。

ポイントまとめ

  • 本漆金継ぎは歴史的に食器として使われてきた実績がある
  • 現代金継ぎは材料ごとの差が大きく、ラベル確認が必須
  • 同じ金継ぎでも、壊れ方や力のかかり方で強度が変わる

ここでお話ししている安全性や強度の考え方は、あくまで一般的な目安です。具体的な材料や製品ごとの安全性については、必ず説明書やメーカー公式サイトを確認してください。

また、体質やアレルギーなど個別の事情がある場合は、医師や専門家に相談したうえで最終的な判断を行うようおすすめします。

本漆金継ぎ食器は?

本漆金継ぎの器は、「ちゃんと硬化しているなら、基本的には食器として使える」と考えています。ただ、その「どこまで使えるか」は、温度・用途・頻度の3つでだいぶ変わってきます。

ここでは、ふだん本漆金継ぎの器を使うときに意識しているラインを、できるだけ具体的にお話ししますね。

まず、温度の面からいくと、本漆金継ぎにとっての天敵は急激な高温です。例えば、熱々の味噌汁を注ぐお椀、沸騰直後のお湯を入れるマグカップ、オーブンから出したばかりの耐熱皿など、100度に近い温度がかかるシーンは要注意です。

器本体は耐えられても、金継ぎ部分だけが膨張してしまい、微細なヒビや浮きの原因になります。

反対に、常温のサラダやおかず、常温〜ぬるめの飲み物を入れる程度であれば、しっかり硬化した本漆金継ぎなら安心して使いやすいゾーンだと感じています。

用途でいうと、「盛り皿」「取り皿」「小鉢」「おやつ用のプレート」などは本漆金継ぎと相性がよいです。これらは、熱々の料理を直接入れる場面が少なく、金継ぎ部分にも過度な負荷がかかりにくいからです。

逆に、マグカップの持ち手部分を継いだ場合などは、持ち上げるたびに力が集中するため、たとえ本漆でも慎重に扱いたいところです。「飾りとして楽しみつつ、たまに使う」くらいの感覚にしておくと安心です。

頻度についても触れておきます。毎日朝晩欠かさず使う器と、週末のご褒美デザート用の器では、金継ぎ部分にかかるトータルの負荷がまったく違います。

毎日使う器の場合は、ちょっとした摩耗や微細なヒビが、数年単位でジワジワ効いてきます。なので本漆金継ぎの器は「ヘビロテ用」よりも、「お気に入りの特別な日のスタメン」くらいの位置づけにして使うことが多いです。

そして、とても大事なのが硬化期間です。本漆は、表面が触れるくらいに乾いても、内部まで安定した状態になるまでには時間がかかります。

作家さんや工房によっても説明は異なりますが、感覚では「最低でも1〜2か月、可能なら3〜6か月くらい寝かせてから本格的に使い始める」と、安心感が違うなと感じています。

もちろんこれはあくまで一般的な目安で、実際の乾き具合は温度や湿度、漆の種類によって変わります。

まとめると、本漆金継ぎの器は、

  • 常温〜ぬるめの料理や飲み物に使う
  • 電子レンジ・オーブン・食洗機・直火は使わない
  • 完全硬化までしっかり時間を置く
  • 毎日ガシガシ使うより、ちょっと良いシーンで活躍してもらう

このあたりを意識しておけば、「本漆金継ぎでもちゃんと食器として使える」という感覚を持ちやすくなるかなと思います。あなたが直したい器の用途や頻度と照らし合わせて、バランスを考えてみてください。

本漆金継ぎを日常使いする目安

  • プレートや小鉢など、負荷が分散する器は◎
  • 持ち手や脚など、力が集中する部分は慎重に
  • 「完全に元通り」ではなく「少し気を遣いながら使う」感覚で

現代金継ぎ食器の安全性と注意点

注意点

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現代金継ぎや簡易金継ぎは、「とにかく扱いやすい」「短時間でそれっぽく仕上がる」ことが大きな魅力です。

そのおかげで、金継ぎのハードルがグッと下がり、器を自分で直して使いたい人が増えたのはすごく良い流れだなと思っています。

ただ、食器として使えるかどうかという視点で見ると、本漆以上に「材料の見極め」が大事になってきます。

現代金継ぎでよく使われるのは、2液混合タイプのエポキシ接着剤や、水性の木工用ボンド、合成樹脂系のパテなどです。これら自体はDIYの世界ではメジャーな材料ですが、「食器として使えるかどうか」は別問題です。

同じエポキシでも、模型用・金属用・タイル用など用途が分かれていて、中には「食品に触れるものには使わないでください」と明記されているものもあります。

ここを読み飛ばしてしまうと、せっかく直した器を安心して使えなくなってしまうので、ちょっともったいないですよね。

食器として使う現代金継ぎで最低限チェックしたいのは、

  • 食品衛生法に適合した材料かどうか(パッケージや説明書に記載があるか)
  • 耐熱温度が明示されているか(100度前後まで対応しているかどうか)
  • 硬化後にどの程度の時間を置けばよいか(24時間、1週間などの指定)
  • 「器具・容器包装」に関する規格基準に触れているかどうか

といったポイントです。食品衛生法自体は法律の名前なので、普段あまり馴染みがないかもしれませんが、ざっくり言うと「食品や器具・容器包装の安全性を確保するためのルール」です。(出典:厚生労働省「食品衛生法」

さらに、接着して終わりではなく、その上から陶磁器用の絵の具やコーティング材を焼き付ける方法もあります。

例えば、耐熱の陶磁器用塗料を150度前後で焼き付けることで、表面をガラス質の薄い膜で覆い、接着剤が直接食べ物に触れにくくする工夫ですね。こういったやり方を取る場合でも、

  • 焼き付け温度と時間を説明書どおりに守れているか
  • 器本体が耐熱温度に耐えられる素材かどうか
  • 塗膜に欠けやピンホールがないか

といった点を確認しておきたいところです。どれか一つでも不安が残る場合は、「直接口をつける部分には使わない」「常温の料理専用皿にする」といった使い分けをしてあげると安心度が上がります。

繰り返しになりますが、現代金継ぎの安全性は「どの材料をどう組み合わせて、どう扱うか」でまったく変わってきます。

ブログやSNSで紹介されているやり方が必ずしもあなたの環境にそのまま当てはまるとは限らないので、最終的には必ずメーカーの公式情報や専門家の意見も参考にしながら、ご自身で慎重に判断してもらえればと思います。

現代金継ぎや簡易金継ぎで「安全」「電子レンジ対応」などの表現があっても、その前提条件は製品ごとに異なります。この記事の内容はあくまで一般的な考え方の紹介であり、特定の商品や工法の安全性を保証するものではありません。

正確な情報は必ず各メーカーの公式サイトや説明書を確認し、気になる点があれば専門家に相談したうえで、最終的な判断はあなた自身の責任で行ってください。

電子レンジ使用可否

電子レンジ、キッチン

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「金継ぎした食器って、電子レンジに入れていいんですか?」という質問、本当に多いです。結論から言うと、基本的にNG寄りで考えています。

例外的に「条件付きでOK」となりうる方法もありますが、そこまで攻める必要があるかどうかは、正直なところ一度立ち止まって考えてみてもいいかなというのが本音です。

まず、電子レンジと金継ぎの相性が悪い大きな理由が、「金属粉」と「高温」です。伝統的な本漆金継ぎでは、仕上げに金粉や銀粉、錫粉などの金属粉を使います。

電子レンジはマイクロ波で食品中の水分を振動させて温める仕組みなので、金属そのものは温まりませんが、金属が電波を反射したり、尖った部分で火花が出たりするリスクがあります。

いわゆる「スパーク」の原因になりやすいので、金継ぎ部分に金属が使われている器を電子レンジに入れるのは、かなり危険寄りの行為と思っておいたほうがいいです。

次に、高温による影響です。電子レンジで温めると、器の一部だけが局所的に高温になったり、急激な温度変化が起きたりします。

これは、漆や樹脂系の接着剤にとってはかなりストレスの大きい環境で、金継ぎ部分だけが膨張・収縮を繰り返して、ヒビや剥離の原因になってしまいます。

特に本漆は、有機物で高温やアルカリに弱いので、電子レンジはもちろん、レンジ調理用の高温スチーム機能なども避けたほうが無難です。

一部の現代金継ぎ風の修復法では、「食品衛生法適合の接着剤+陶磁器用絵の具を150度前後で焼き付け」という条件で、電子レンジや食洗機の使用を想定しているものもあります。ただ、その場合でも、

  • 指定された配合比率・塗布量・乾燥時間を守れているか
  • 家庭用オーブンで温度ムラなく焼き付けできているか
  • 器本体がその温度に耐えられる素材かどうか

など、クリアすべき条件がたくさんあります。

ここまで気を使ってやるくらいなら、「金継ぎした器は電子レンジには入れない」というルールにしてしまったほうが、トータルでは安心でラク、というのが実感です。

なので、個人的なおすすめとしては、

  • 金継ぎした器には、電子レンジで加熱したい料理は入れない
  • どうしても使いたい場合は、別の耐熱容器で温めてから盛りつける
  • 家族にも「この器はレンジNG」と共有しておく

という運用にしておくのがいいかなと思います。少し手間は増えますが、器へのダメージと安全面のリスクを考えると、そのほうがストレスが少ないはずです。

電子レンジと金継ぎのまとめ

  • 本漆金継ぎ+金属粉仕上げなら基本的に電子レンジNG
  • 現代金継ぎでも、材料や条件が完全にクリアできないならNG寄りで考える
  • 「レンジ用の器」と「金継ぎした器」は役割分担するのがおすすめ

金継ぎ食器と食洗機の相性

食洗機、ワイングラスなどクリスタル製品や陶器の食器洗い

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次に、食洗機との相性です。ここも、あなたの暮らしのリアルに直結するところですよね。「食洗機を使う前提で、金継ぎした食器をどこまで日常に混ぜていけるか」は、かなり悩ましいテーマだと思います。

結論から言うと、本漆金継ぎはもちろん、現代金継ぎも基本的に食洗機NG寄りで考えておくのが無難です。

理由はシンプルで、食洗機は「高温の水」「強い洗剤」「強い水圧」「急な温度変化」という、金継ぎにとって厳しい条件が全部そろっているからです。

特に、食洗機用洗剤は高い洗浄力を出すためにアルカリ性のものが多く、漆や樹脂系の塗膜をじわじわと傷めていきます。

最初のうちは見た目に変化がなくても、数ヶ月、数年と使っていくうちにツヤが落ちたり、継ぎ目が白っぽくなったり、細かいヒビが入ったりしやすくなります。

また、食洗機の高温乾燥モードも要注意ポイントです。洗浄時の高温→すすぎ→乾燥の流れの中で、器に何度も温度変化がかかるため、金継ぎ部分だけが何度も膨張・収縮を繰り返すことになります。これは、本漆でも現代金継ぎの樹脂でもあまりうれしくない環境です。

とはいえ、「家族が多くて、全部手洗いは現実的じゃない…」という事情もあると思います。そんなときは、

  • 金継ぎした器はキッチンの中で「手洗いゾーン」に分けておく
  • シンク横に「金継ぎした器専用バスケット」を用意する
  • 家族にも「金の線が入っている器は食洗機NGだよ」と共有してもらう

といった運用面の工夫がおすすめです。ラベルを貼るのも一つの手ですが、うつわの見た目を大事にしたい場合は、収納場所を変えるほうがストレスが少ないかもしれません。

また、食洗機NGだからといって、手洗いが難しいわけではありません。柔らかいスポンジと中性洗剤で、継ぎ目をゴシゴシこすりすぎないように洗ってあげれば十分です。

あとは、長時間のつけ置きは避ける・洗ったらすぐ拭いて乾かすという基本だけ意識してもらえれば、かなり状態をキープしやすくなりますよ。

普段の器選びと食洗機の相性については、焼き物は食洗機を使って大丈夫?素材別対応と正しい使い方でも素材ごとに詳しく整理しているので、「どの器を食洗機OKにするか」を決める参考にしてもらえればと思います。

金継ぎの有無にかかわらず、食洗機の使用可否はうつわの素材や釉薬、厚みなどによっても変わります。

ここでご紹介している内容はあくまで一般的な目安であり、すべての器に当てはまるわけではありません。必ずメーカーや窯元の注意書き、食洗機の取扱説明書を確認したうえで、最終的な判断はあなた自身で行ってください。

金継ぎの食器を長く使える実践ガイド

食器の使い方やポイントを説明する女性

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ここからは、実際に金継ぎした食器を日常で長く使うための、もう一歩踏み込んだ実践的な話をしていきます。

日々の洗い方や保管のコツ、どんな器なら金継ぎ向きか、逆にあきらめたほうがいいケースはどれか、さらにプロに頼むかDIYするかの判断材料や費用感まで、できるだけ具体的にまとめました。

あなたのキッチン環境やライフスタイルに照らし合わせながら読んでみてください。

日常使いで金継ぎ食器を守るコツ

日常使いで金継ぎ食器を長持ちさせるコツは、「摩擦」「水分」「温度変化」をコントロールすることです。

すごく特別なことをする必要はなくて、どれも「ちょっと気をつける」レベルの工夫で十分。その小さな積み重ねが、数年先のうつわの状態にけっこう効いてきます。

まず、摩擦について。金継ぎの部分は、器全体の中でもどうしてもデリケートなゾーンです。洗うときに金たわしや研磨剤入りのクレンザーを使ってしまうと、漆や樹脂の表面が削れて、そこから水が入り込みやすくなります。

なので、基本は柔らかいスポンジ+中性洗剤。継ぎ目の部分は特に、押しつける力を少し弱めて「なでる」イメージで洗ってあげるといいですよ。

次に、水分です。長時間のつけ置き洗いは、金継ぎにとってあまり歓迎できません。シンクに張った水の中に数時間漬けっぱなし…みたいな状態は、継ぎ目の隙間から水が染み込みやすく、漆や接着剤の劣化につながります。

おすすめは、食事が終わったら「できるだけ早めに」「サッと洗って」「布巾で水気を拭き取ってから片付ける」という流れです。完璧でなくても大丈夫なので、意識しているだけでもかなり違います。

温度変化については、特に「冷蔵庫→熱々」「真夏の直射日光」の2つに注意です。例えば、冷蔵庫でキンキンに冷えた器に、沸騰したスープを一気に注ぐと、器本体と金継ぎ部分で膨張具合が違って、そこにストレスがかかります。

できれば、冷えた器は少し常温に戻してから使うか、常温の料理専用にしてあげると安心です。

収納のしかたも、意外と大事です。金継ぎ部分が他の器の縁や高台とこすれると、そこから少しずつ傷が広がります。

重ねるときは、金継ぎ部分が直接当たらないように向きを工夫したり、間に薄いクロスやキッチンペーパーを挟んだりするだけでも、かなりダメージを軽減できますよ。

日常使いのちょいテクまとめ

  • 金継ぎ部分は「なで洗い&すぐ拭き取り」が基本
  • つけ置きしない、直射日光に長時間さらさない
  • 収納時は金継ぎ部分が他の器とこすれないように工夫する

豆知識:漆材料と道具の保管
本漆をチューブや瓶で保管するときは、高温を避けて冷暗所に置くのが鉄則です。特に夏場の車内や直射日光の当たる窓辺はNG。40度を超えるような環境が続くと、漆の中の酵素がダメージを受けて、うまく硬化しなくなる可能性があります。

道具の筆は、先端に少量の油を含ませてキャップをしておけば固まりにくくなりますが、次に使う前には必ずアルコールなどで油をしっかり拭き取ってから漆をつけてくださいね。

金継ぎで修理できる食器と使えない器

OKかNG、おすすめかダメか

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「この器は金継ぎしたら食器として使える?」「そもそも金継ぎに向いているの?」という疑問もよくいただきます。

正直なところ、すべての器が金継ぎに向いているわけではありませんし、きれいに直せても食器として使うのはおすすめしないケースもあります。

ここでは、素材や形、用途ごとに「金継ぎ向き/向いていない」をざっくり整理してみますね。

金継ぎに向いている/向いていない器の例

分類 具体例 食器として使える目安
向いている 和食器の陶器・磁器の平皿や茶碗 本漆・現代金継ぎともに、常温〜ぬるめの料理なら◎
向いている 湯のみ、小鉢、豆皿など 電子レンジと食洗機を使わない前提なら日常使いしやすい
条件付き ガラスのカップやボウル 技術的に難易度が高く、プロでも工夫が必要。観賞用推奨の場合も多い
向いていない 直火にかける土鍋、ホーロー鍋 高温・急激な温度変化が多く、金継ぎしても調理用としては非推奨
向いていない 常に蒸気にさらされるポットの蓋など 継ぎ目が高温多湿にさらされるため、長期使用のリスクが高い
向いていない 花瓶など水に浸かりっぱなしの器 水浸し環境は漆や樹脂に負担が大きく、剥離しやすい

陶器や磁器のお皿・鉢・茶碗など、いわゆる「ふだん使いの和食器」は、金継ぎとの相性がとても良いです。

素地に微細な凹凸があるので、漆や樹脂が物理的に噛み込みやすく、接着強度も出しやすいからです。割れ方が素直で、破片がちゃんと残っているほど修復もスムーズになります。

一方で、ガラスは表面がつるつるで、素材の膨張率も陶器とは違うので、金継ぎの難易度が一気に上がります。プロの世界でも、ガラス金継ぎはかなりチャレンジングな分野で、技法も完全に定まっているわけではありません。

食器として毎日使う前提だと、どうしてもリスクが高くなるので、「観賞用として楽しむ」「短時間だけ飲み物を入れる」といった使い方にとどめておくのが現実的かなと思います。

さらに、土鍋やホーロー鍋など、直火やオーブンにかける器は、金継ぎしても元のように調理用として使うのはおすすめしません。理由は単純で、調理中にかかる温度とストレスが桁違いだからです。

鍋のフチや持ち手などが割れてしまった場合は、思い切ってキッチンの飾りに回すか、鉢植えカバーなど「火を使わない用途」に転用するほうが安全です。

判断に迷うときは、

  • 直火・オーブン・グリルなど高温調理に使うか
  • 長時間水や蒸気にさらされるか
  • 破片がきれいに残っているか(粉々になっていないか)

という3つの視点で考えてみてください。どれか一つでも「かなり怪しいな…」と感じるなら、金継ぎしても食器としてではなく、飾りや物入れなど別の用途で活躍してもらうほうが、うつわにもあなたにもやさしい選択になると思います。

簡易金継ぎと現代金継ぎ食器の選び方

本漆金継ぎか、簡易金継ぎや現代金継ぎか。これは、「どれくらい手間をかけられるか」と「どこまで日常使いしたいか」のバランスで選ぶとスッキリしやすくなります。

どちらが絶対に正解、という話ではなくて、器の価値やあなたのライフスタイルに合わせて選ぶ感覚ですね。

本漆金継ぎは、道具も行程も多く、湿度の管理や硬化の待ち時間もそれなりに必要です。その代わり、しっかり硬化したあとの質感や風合いはやっぱり特別で、金継ぎのライン自体が器の表情としてなじんでいきます。

「家族から受け継いだ器」「作家ものの大事なうつわ」など、簡単には手放せない器は、本漆金継ぎに任せるのが個人的にはおすすめです。

簡易金継ぎ・現代金継ぎは、とにかく手軽さとスピードが魅力です。2液混合のエポキシ接着剤を使えば数時間〜1日で実用レベルの強度に届きますし、市販のキットもたくさん出ているので、初めてでもチャレンジしやすいと思います。

その一方で、材料選びを間違えると、食器として使えなかったり、数年で接着部分が黄ばんだり剥がれたりするリスクもあります。

あなたが選ぶときの目安としては、

  • 「一生ものの器」→ 本漆金継ぎでプロに依頼、もしくはじっくりDIY
  • 「普段使いの器/子どもがよく使う器」→ 安全性重視で現代金継ぎ材料を慎重に選ぶ
  • 「練習用/そこまで高価ではない器」→ 簡易金継ぎキットでまずは経験してみる

という感じがひとつの基準になるかなと思います。接着剤そのものの安全性や選び方については、食器に使える接着剤の安全性重視な選び方と使用上の注意点で詳しく整理しているので、組み合わせて考えてもらうとイメージしやすくなりますよ。

どの方法を選ぶにしても、「見た目」だけでなく「どう使うか」までセットで考えるのがポイントです。

仕上がりがきれいでも、口元に使うのはちょっと不安…という材料なら、口に直接触れない盛り皿や菓子皿に回すなど、用途の工夫も大事な安全策のひとつだと思っています。

あなたに合う金継ぎの選び方

  • 思い出の器ほど、本漆金継ぎでじっくり向き合う
  • 普段使いの器は、現代金継ぎでも安全性を最優先
  • 用途とライフスタイルに合わせて、「どこまで日常に投入するか」を決める

修理費用とDIYキット

価格、金額、お金

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最後に、金継ぎにかかるお金まわりの話です。ここはかなり個別差が大きいところなので、あくまで「こんなイメージなんだな」という目安として読んでもらえればと思います。

器のサイズや割れ方、仕上げに使う金属粉の種類、本漆かどうかなどで、費用感はけっこう変わってきます。

プロの工房に本漆金継ぎで依頼する場合、小さな欠けであれば数千円台後半から、割れの枚数が増えたり、金粉仕上げを選んだりすると1万円を超えることも珍しくありません。

例えば、口縁の3センチ程度の欠けなら「基本料金込みで数千円台」、器全体がパキッと割れて3片に分かれてしまったような場合は、「基本料金+継ぎ目の長さに応じて加算」といった料金体系になっていることが多いです。

DIYキットの場合、本漆金継ぎキットは数千円〜1万円台前半くらい、簡易金継ぎキットは数千円未満のものもあります。

初期費用だけ見ると、「あれ?プロに頼むより安いかも」と感じるかもしれませんが、ここで考えたいのが「何枚くらい直したいか」と「どこまで完成度を求めるか」です。

1客だけをとびきりきれいに直したいなら、プロにお願いするほうが結果的に満足度が高い場面も多いですし、10枚以上まとめて直したいなら、キットを使ってコツコツDIYするほうがコスパが良いこともあります。

プロ依頼とDIYのざっくり比較

  • プロ依頼:仕上がりと安心感重視/費用は器の状態次第で変動
  • 本漆DIYキット:時間と根気は必要だが、複数枚直すならコスパ◎
  • 簡易キット:とりあえず実用レベルに戻したいときの選択肢

費用の数字はあくまで一般的な目安で、為替や材料費、工房ごとの方針によって変わります。正確な料金を知りたいときは、写真を撮ってサイズと割れ方がわかるようにしてから、気になる工房に見積もりを依頼するのがいちばんです。

複数の工房に問い合わせて比べてみると、「自分の器に合うスタイルの職人さん」が見つかりやすくなりますよ。

ここでお伝えした費用感は、あくまで一般的なレンジのイメージです。実際の料金は、必ず各工房・サービスの公式サイトや見積もりで確認してください。

また、DIYの場合も、材料の安全性や保存方法をよく理解したうえで作業を行い、最終的な判断はあなた自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

金継ぎした食器は使えるかの:結論

ここまでかなり長くなりましたが、「金継ぎした食器は使えるのか?」という最初の問いに、あらためて結論をまとめますね。

ざっくり言うと、「条件を理解して、使い方を少し工夫すれば、金継ぎした食器はちゃんと日常で使える」という立場です。

ただし、「なんでもOK」ではなく、いくつかの割り切りとルールを決めてあげることが前提になります。

まず、本漆金継ぎの器について。これは、歴史的にも漆器として食卓で使われてきた実績があり、きちんと硬化していれば、常温〜ぬるめの料理や飲み物には十分耐えられると考えています。

その代わり、電子レンジ・オーブン・食洗機・直火はNG。使うタイミングと用途を選びながら、「少し丁寧に扱う」スタンスで日常に取り入れていくイメージです。

現代金継ぎ・簡易金継ぎの器については、材料選びと扱い方次第で、日常使いの選択肢になりうると思っています。

ただし、食品に触れてもよいとされる材料かどうか、どこまでの温度に耐えられるのか、完全硬化までの時間はどれくらいか、といった点をきちんと確認したうえで、「この器は常温の料理専用」「この器は口元に使わない」など、器ごとのルールを決めておくのが安全側の考え方です。

そして、すべての金継ぎ器に共通して言えるのは、

  • 高温・長時間の浸水・強い摩擦はできるだけ避ける
  • 少しでも違和感を覚えたら、早めに使用をやめて状態をチェックする
  • 無理して「元どおり」に使おうとせず、新しい役割を与えるのも選択肢

ということです。大切なのは、あなたが安心して、気持ちよく器と付き合い続けられること。無理に「毎日ガシガシ使う」ことだけが正解ではなく、「特別な日にそっと出番をつくる」「観賞用として眺めて楽しむ」といった付き合い方も、金継ぎのうつわにはよく似合うと思います。

最後にもう一度だけ。この記事でお話しした内容は、あくまで一般的な目安にもとづく考え方です。

具体的な材料や製品、あなたの体質や環境によって、安全性や適切な使い方は変わってきます。正確な情報は各メーカーや工房の公式サイト、法律・ガイドラインなどの一次情報を必ず確認し、必要に応じて専門家にも相談しながら、最終的な判断はあなた自身の責任で行っていただければと思います。

それでも、金継ぎした食器がもう一度あなたの食卓に戻ってきて、「あ、やっぱりこの器が好きだな」と感じる時間が生まれたら、とても嬉しいです。